ESSE onlineで記事が公開されました。
今回のテーマは「免許返納問題」でした。東池袋自動車暴走死傷事故から1年…。遺族の男性が「それぞれのご家庭で事情があることは重々承知しておりますが、少しでも運転に不安がある人は車を運転しないという選択肢を考えて欲しい。」切々と訴えかけた記者会見の様子に、さまざま考えさせられた人も多かったと思います。
2019年は免許返納が過去最多になった
2020年3月24日に発表された警察庁の運転免許統計によると、2019年の運転免許証を返納件数は60万1022件と、前年比42.7%増で過去最多となりました。そのうち、半数以上に上る35万0428人が、75歳以上であったことも公表され、悲しい事故の教訓が高齢ドライバーの免許返納を加速させる結果となりました。
◆事件後に残ったモヤモヤ感。危険運転致死傷罪にならないワケは?
過失運転致死傷の疑いで書類送検された当時88歳の男性の容疑は自動車運転処罰法違反。罰則の重い危険運転致死傷罪は適用されませんでした。即逮捕すらされなかったこの男性は、「上級国民」と揶揄され熱を帯びて炎上する事態となったほど。“元官僚”という肩書が身柄拘束の判断に影響したのではという憶測は、今も消えぬまま。
危険運転致死傷罪が適用されなかった理由の1つに足が不自由だということがあり、医師からも「運転は許可できない」と伝えられていたにも関わらず、運転をして事故を起こしました。しかし、結果的に起きてしまった暴走は「故意ではない」「踏み間違いという過失であれば危険運転まではいかない」という判断です。
高齢者の運転に不安を感じる人は多い
アンケートのなかでも年をとった老親の運転に不安を感じている家族がたくさんいました。筆者もそのなかのひとりです。父親はまだ60代ですが、すでに「運転中に眠気を感じる」などの症状を話していました。幸い、バスやタクシーなどの公共交通機関を使えば、さほどの不便を感じない場所に居住していたこともあり、家族で話し合って、免許は更新しないことになりました。
◆車が必要な地域で高齢者の生活はどうすればいいのか?
しかし、そうはいかない地域に住んでいる人もいるかと思います。アンケートの回答を見ながら、車がないと生活できない地域の高齢者が取り残されないようにするためには、どうすればいいのか?家族のサポートだけでは、おいつかない難しさを感じました。
親や親せきが70歳を迎える前に、真剣に話し合うべきだし、精神的に心配な側面があるときには行政に早めの相談を開始するなど、できる限りの対策を先手で打っていく必要があると思います。
頑固な高齢者ほど免許返納していなさそう…
そもそも「運転危ないから免許返納を考えよう」と家族に提案されて、すんなり応じてくれるような高齢者は、池袋のような重大事故を起こさない気がします。
池袋の事故の加害者は「ブレーキがきかなかった」「体力にその当時は自信があったけど」「おごりがあったのかなと」などの発言が報道されていました。こういう頑固な高齢者って、一定数いそうです。殴ってでも説得してくれる家族がいればいいですが。事故が起きてからでは遅いのです。死んでしまった被害者は帰ってきません。
◆一刻も早く裁判をスタートさせて事件を風化させないで
法律的には70歳を超えている場合、刑の執行停止、つまり服役しないですむ場合もあるそう…。彼一人の実刑判決で、何かがかわるわけではありませんが、自分で責任すらとれない高齢者は、「マジで運転とかしないでくれよ」と思わずにはいられません。
早く裁判を開始し、この事件を風化させないでほしいです。そして、まだ免許を返納していない高齢者やその家族は、もう一度、この事件の被害にあった方の立場に立って、車の運転の必要性を考え直してほしいと思いました。